肉の旨さはさすが! TACUBOの新店Burger POLICE
今すぐ首を垂れて自首したい、これ程までに出頭したいと思ったのは、息子が園児だった頃に一緒に見ていた(特捜戦隊)デカレンジャー以来かもしれない。碑文谷警察署の隣に突然現れたBurger POLICE(バーガーポリス)の塩バーガーやザ・バーガーは、デカイエローの木下あゆ美、デカピンクの菊池美香を凌駕するほどの強烈な魅力を放っていた。
明日も、また出頭したい。そう思わせる危険な依存性に満ちている。しかも、一切の肉を使わず素材の実力を静かに主張する、デカグリーン的なキャラクターの王様しいたけバーガーまであって、キャラクター設定も秀逸だ。
アボカドだ、フォアグラだ、ブロッコリーだ、ラム煮の林檎だ、パイナップルだと、バベルの塔の如くいたずらに縦に伸びていくグルメバーガーの世界。そんな中で、ストイックなまでにパティとバンズの組み合わせだけで勝負する。バーガー界の革命児、Burger POLICEって何者なんだろうか!?
大阪の北新地、福岡の中洲など色街で愛されるひと口餃子は、綺麗なお姐さんたちが口を汚さず、化粧崩れしないように生み出されたと言う。だったら、グルメバーガーは、その対局を行く世界観だ。もちろん、ご同伴には向かないし、一所懸命お洒落して出かけてきた彼女とのデートにも向かないだろう。
でも、男だって、むやみと口を汚したくないし、それ以前に食べづらいものはごめんだ。誰よりも、食べづらさに拘った人物こそ、Burger POLICE署長の田窪シェフだ。
名前を聞いて、「ええっ!?」と思った方も多いはずだ。そう、Burger POLICEはあのミシュラン星付きリストランテTACUBOの2号店だ。コロナ禍の中、 TACUBOが2号店を出すという噂が街を騒がせた時、ハンバーガーショップという正解を想像した者は、まずいなかっただろう。
しかし、それはシェフ目線で味を構築された、まったく新しいバーガー・ビストロだ。まず、バンズの中に食べづらさの真犯人、トマトやレタスなどの野菜が見当たらない。その代わり、野菜はきちんと前菜で出す。そのすべてが、当然のTACUBOクオリティであることは言うまでもない。
グラスで色々開けられている自然派ワインを飲みながら、旬の素材で満たされた前菜をつまみつつ、メインのハンバーガーを待つ、こんな店、これまでお目にかかったことがなかった。
Burger POLICEには5つのルールがある。
食材と生産者さんの想いを一緒に挟む、味に直結しない余計なものは挟まない、 バンズが最後までサクサク、食べるときに口や手が汚れない、ハンバーガーでみんなを幸せにする。
フラッグシップメニューの塩バーガーを頬張ると、5つのルールの意味がよく分かる。塩とバターだけで味付けたパティとバンズのみ、口は一切汚れない。野菜やソースなどで味が薄まらないから、肉の旨みがダイレクトに打ち寄せて来て、幸福感でいっぱいになる。
肉は黒毛和牛の経産牛、フランスで珍重されるシャロレー牛も5歳から8歳の経産牛、その深い香りや味わいは真の牛肉好きたちを虜にする。だが霜降り信仰の我が国では、ペットフードや肥料という悲しい最期を迎えることさえある。塩バーガーは、食べる人たちでなく、一所懸命働いた彼女たちにも幸せなメニューだ。
コロナ禍の中、通常のスーパーマーケットなどではなく、飲食店相手に流通していた食材は卸先を失い、悲鳴を上げていた。そんな中、いつも自分たちの店を支えてくれる真摯な生産者たちに、どうにかしてエールを送りたい。そう考えたシェフたちの答えが、テイクアウトやデリバリーだった。
そして、田窪シェフが行き着いた答えがBurger POLICEだ。だから経産牛だけでなく、日本一の鮪仲卸やま幸の鮪や、北海道・福田農園の王様しいたけもメニューに登場する。
足し算の美学で増大していグルメバーガーの中で、凛とした存在感を放つ引き算の味覚のハンバーガーたち。口に含んだとたん、スッと身体に沁み渡っていく自然派ワインのように、Burger POLICEのハンバーガーはすべての人たちの心を幸せで満たすだろう。今すぐ余計なことは考えずに、いち早く出頭することをお勧めしたい。
Burger POLICE(バーガーポリス)
東京都目黒区碑文谷4-24-16
TEL:03-6303-1104
※新型コロナウイルス感染防止などの事情により、店舗の営業時間、サービスの変更などが行われる場合があります。訪問前にご確認ください。